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市長施政方針(令和2年第1回朝倉市議会定例会)

登録日:2020年03月25日

 

 本日ここに、令和2年第1回朝倉市議会定例会を招集いたしましたところ、皆様方にはご多忙な中にお繰り合わせご出席を賜り、厚くお礼申し上げます。
 本議会は、市政運営の基本となる令和2年度の当初予算をはじめ、多くの重要な案件について、ご審議をお願いするものであります。したがいまして、その冒頭で私の令和2年度における市政運営に対する所信の一端を申し述べ、議員各位をはじめ市民の皆様のご理解とご協力をお願い申し上げる次第であります。
 令和2年度は、私にとりましては就任3年目となります。未曾有の被害をもたらした平成29年7月九州北部豪雨災害から2年7か月が経過いたしました。私は、就任当初から「ふるさとを取り戻す」の理念のもと、復旧・復興に全力で取り組んでまいりました。平成30年、令和元年と毎年のように続く豪雨災害は、復旧・復興に大きな影響を与えました。
 令和2年度からは、「復興計画」において、復旧期から再生期、すなわち被災前の活力を回復し、地域の価値を高める期間を迎えます。平成3010月から指定されていた長期避難の解除を目指し、すまいの再建を加速させるとともに、道路や河川、農地などの復旧計画を具現化し、復旧・復興を目で見える形で実感していただける年度にしたいと考えております。
 同時に、新たに策定する第2期朝倉市総合戦略のもと、「関係人口」を創出・拡大し、地域の活性化や将来的な移住者の拡大を図るとともに、結婚・出産・子育ての希望を叶えるさらなる少子化対策を実施し、予想を超えるスピードで進んでいる人口減少問題に取り組んでいかなければならないと考えています。
 世界の状勢を見てみますと、イギリスのEUからの離脱、新型コロナウイルスの感染拡大、アメリカ合衆国と中華人民共和国の貿易摩擦や中東地域の緊迫度の高まりなど、先行きを見通すことが難しく、我が国の経済情勢に大きく影響すると危惧しております。また、持続可能な開発目標を原動力とした取組SDGs(エス・ディー・ジーズ)は、これからの社会全体に大きな変革をもたらしていくと考えられます。
 国内におきましては、4年に一度のスポーツの祭典、東京オリンピック・パラリンピックが夏に開催されます。また、仮想空間と現実空間を融合させたシステムで経済発展と社会的課題を解決する人間中心の社会Society(ソサエティ)5.0の実現に向けた未来へのチャレンジやIT端末を活用したプログラミング教育も始まってまいります。令和2年度も国と地方を取り巻く環境は、引き続き大きく変動していくものと思われます。
 
政府は、令和2年度政府予算案について、次の3点を掲げております。
 1点目は、全世代型社会保障制度の構築に向け、消費税増税分を活用し、今年4月から、高等教育の無償化、予防・健康づくりの取組など医療・介護分野の充実を実施。
 2点目は、経済対策を実行するため、補正予算に加え、本予算で臨時・特別の措置を計上し、東京オリンピック・パラリンピック後も見据えて、個人消費や投資を切れ目なく下支え。
 3点目は、「新経済・財政再生計画」のもと、歳出改革の取組を継続し、「目安」を達成。これらを掲げ、経済再生と財政健全化を両立する予算として、昨年度に続き100兆円を超えるものになっております。国の動きを見定めながら、本市の施策に的確に対応させてまいります。
 現在、本市では、災害の影響もあり、様々な事業を延期又は中止しております。全ての事業が被災前と同様に実施できるとは限らず、見直しが必要であると考えております。合併特例債事業は、令和7年度までの適用となっており、凍結しております大型事業につきましては、財政状況を勘案し、優先度を検討したうえで、順次方針を示しながら、将来に向けた「責任ある決断」が必要であると考えております。
 さて、令和2年度の行政運営は、昨年3月に策定しました第2次朝倉市総合計画に基づいて展開してまいります。時代の潮流、市民意識やニーズを的確に把握しながら、少子高齢化や人口減少といった本市の現状を踏まえ、特に重点的に取り組んでいくこととしております。
 さらに、災害からの復旧・復興と地方創生の推進の2つを横断的に取り組む重点分野として、施策の枠組みを越え、連携させながら、全庁を挙げて取り組んでまいります。
 特に地方創生の推進につきましては、今年3月に策定します第2期朝倉市総合戦略におきまして、人口ビジョン達成のための新たな重要業績評価指標となるKPIを立て、出生率の向上、社会減の抑制を果たすため、実効性ある施策に取り組んでまいります。
 令和2年度の主な取組を総合計画の9つの基本目標ごとに申し上げます。
 まず、一つ目の基本目標、「災害や危機に強く、安全・安心が実感できるくらしの実現」についてです。
 杷木地域の旧小学校跡地活用や災害を後世に伝える伝承広場の整備、宅地耐震化事業などにつきましては、地域と意見を交わしながら復興実施計画を策定してまいります。具体的には、松末地域に定住促進住宅を整備するとともに、旧久喜宮小学校跡地の宅地分譲と防災拠点施設の整備を継続してまいります。また、災害土砂を活用した宅地の嵩上げ事業を寒水川、乙石川流域などで実施してまいります。
 一方、被災者の心のケアとしまして、生活再建及び心の健康状況について保健師などによる相談サポートや被災者一人ひとりの復興を実現させるため、状況に応じたきめ細かな支援を行う地域支え合いセンターを引き続き運営し、被災した住民同士の交流活動を支援していく取組も行ってまいります。
 さらに、地域の防災力の向上としまして、コミュニティ協議会による自主防災組織と連携して防災の専門的知識を有する人材を育成するために、防災士の資格取得費の補助を引き続き行ってまいります。
 次に、二つ目の基本目標、「人がつながり、支えあう活力ある地域社会の創造」についてです。
 市内の17地域コミュニティの活動を円滑に進めるため、引き続き活動助成交付金と合わせて各コミュニティセンター施設の営繕などを行ってまいります。
 令和元年に「朝倉市部落差別をはじめあらゆる差別の解消を推進し人権を擁護する条例」を制定いたしました。この条例に基づき、全ての人の人権が尊重されるまちづくりの実現に向けて、引き続き粘り強い教育と啓発を推進してまいります。
 あらゆる分野において、性別に関わりなく個性や能力を発揮する機会と参画できる学習の場を増やし、男女共同参画のさらなる推進を図るため、今年4月から男女共同参画センターを開設いたします。また、平成30年度実績では31.8パーセントでありました審議会などの女性委員の割合を3年後は35パーセントに引き上げることを目標として掲げ、男女共同参画社会の実現を目指してまいります。
 次に、三つ目の基本目標、「誰もが健やかで、生き生きと暮らせる保健福祉の充実」についてです。
 健康で自分らしく暮らしていくためには、定期的な健診、体力づくり、介護予防などが重要であります。直営による運営継続を決定した朝倉診療所を中心に、予防医療の取組を継続してまいります。
 また、高齢者のフレイル予防や重症化予防のために、高齢者の健康課題に対応した健康相談や保健指導を実施することにより、高齢者の保健事業と介護予防事業の一体化を推進し、市民の健康寿命の延伸を図ってまいります。
 次に、四つ目の基本目標、「次代につなぐ良好な環境の保全」についてです。
 3月に策定します第2次朝倉市環境基本計画をもとに、市民、民間団体、事業者及び行政が互いに補完しあい、協働しながら、良好な地域環境及び地球環境の創造を目指してまいります。また、森林環境譲与税を活用した水源かん養のための荒廃森林整備に取り組んでまいります。
 ごみ問題につきましては、適正処理とリサイクル、市民が主体となった環境美化運動を推進することにより、ごみの無いまちを目指し、あわせて食品残さの再資源化などを一層推進することにより、循環型の社会構築を目指す取組を引き続き充実させてまいります。また、水環境のバロメーターでもありますスイゼンジノリの保全につきましては、成育環境の改善を目指してまいります。
 次に、五つ目の基本目標、「豊かな地域資源を活かした産業、観光の振興」についてです。
 農業は、本市の基幹産業であります。しかしながら、就農者の高齢化や後継者不足により、その基盤が揺らいでおります。それらの課題に真摯に向き合い、農業の振興に努めてまいります。
 豪雨災害で被災した農家の農業再開に向けて、区画整理事業による災害復旧を本格的に着手してまいります。また、県との共同により、中間管理機構が行う災害復旧後の農地の借り手を探す事業や被災した農家が営農計画を作成することに対する支援を行ってまいります。さらに、新規就農者を定着させるための支援を拡充し、県の補助事業を活用しながら、スマート農業の導入にも力を入れるなど、農業の持続可能性を高めてまいります。
 雇用の確保につきましては、産業政策マネージャーによるきめ細かな企業誘致や新規創業者を対象とした支援を継続して取り組んでまいります。また、市内事業所の従業員の確保につきましても関係商工団体と協議を進めてまいります。商工会議所及び商工会が合同で行うプレミアム付き地域振興券の発行に対する助成を引き続き行うなど、中小企業の振興にも力を注いでまいります。
 観光振興につきましては、小石原川ダムの完成にあわせ、観光客が水源地を訪れる拠点となる新たな観光資源として、コア山を活用していくことを検討してまいります。また、4月から導入されます宿泊税を財源に、県内随一の温泉地をもつ本市として様々な観光振興策を実施してまいります。特にインバウンド対策としましては、多言語に対応できる人材を地域おこし協力隊に登用し、人員も大幅に増員することで、外国人観光客の増加と訪日体験の質の向上を目指してまいります。
 次に、六つ目の基本目標、「快適で住みよい都市基盤の充実」についてです。
 上下水道事業の将来にわたっての事業の在り方について、管路の耐震化や更新時期、料金改定、資産管理などの経営戦略策定業務に取り組んでまいります。また、市営住宅につきましては、災害で延期しておりました東中町団地の建替えを行うとともに鳩胸団地の建替えに着手してまいります。さらに、移住・定住促進事業としまして、要望の多い住宅リフォームや転入者への新築補助を継続するほか、都市部からの移住を促すためのお試し居住体験事業や他市町村からの若い世代や起業家、就業者、新規就農者などの移住に対する支援にも取り組んでまいります。
 次に、七つ目の基本目標、「笑顔があふれ、将来に夢や希望をもち活躍できる子どもの育成」についてです。
 子育て支援につきましては、乳幼児の健やかな発育のために、乳幼児視覚検査事業、新生児聴覚検査助成事業を行うことで早期発見・早期治療を促してまいります。また、紙おむつの廃棄が負担となる多子家庭への支援として、市の指定ゴミ袋の配布を行ってまいります。さらに、産後に身体的不調や育児不安などがある方に対し、子育ての技術的アドバイスを行う、前向き子育て応援事業に取り組んでまいります。
 少子化対策につきましては、結婚するカップル数を増やすために、専門の部署を立ち上げ、出会いから結婚まで着実にフォローする縁結び応援事業に取り組んでまいります。また、安川保育所敷地内に秋月・安川保育所の統合に伴う新たな保育所を建設するほか、蜷城学童保育所及び大福学童保育所を建設するなど、子育てしやすい環境づくりを進めてまいります。
 次に、八つ目の基本目標、「生涯にわたる学び、活動の推進」についてです。
 歴史の継承と文化の振興として、秋月の歴史を発信する秋月博物館の周辺の環境整備として、地域情報施設の整備を行いました。今後、様々なイベントを開催することで歴史と触れ合うことができる場とし、秋月地域への集客に繋げてまいります。また、子どもたちのスポーツへの関心を高めるために、アビスパ福岡とフレンドリータウン協定の締結を行います。プロのサッカー選手に触れ合う機会を通じて、スポーツの楽しさ、夢を持つことの大切さを学ぶことは、子どもの健やかな成長につながるものと考えております。
 オリンピック・パラリンピックイヤーということで、日本全国に元気な話題があふれています。朝倉市でも聖火ランナーが5月に被災地を走ります。また、25年ぶりに「NHKのど自慢」の公開録画が本市で行われます。この機会にメディアを通して、これまで本市に支援をしていただいた方々に対する感謝の気持ちと復旧・復興を全国に発信したいと考えております。
 次に、九つ目の基本目標、「透明性・効率性の高い持続可能な行財政運営」についてです。
 従前からの取組と新規事業を組み合わせて効果的にPRし、市民に暮らしやすさを実感してもらい、市外の人にも朝倉市の情報が分かりやすいと感じてもらえるよう、ホームページや広報誌のリニューアルに取り組んでまいります。
 ふるさと納税につきましては、返礼品の品揃えやウェブサイトの拡充といった地道な努力を重ね、制度本来の趣旨に基づく取組の中で順調な伸びを示すことができました。引き続き貴重な財源確保の一助になるよう積極的に取り組み、目標額を13億円といたします。
 山積する行政課題をクリアしていくために、人材は、何ものにも代えがたい財産であります。行政評価、人事評価などを通じて、職員の資質、やる気及び危機対応能力を向上させるとともに、他自治体との人事交流や専門人材の受け入れを拡充します。また、災害対応による健康面を配慮した職場環境の向上や働き方改革の実践にも引き続き取り組んでまいります。
 災害からの復旧・復興と地方創生に同時に取り組むには、多くの財源と人員並びに一定の時間を必要といたします。財源につきましては、想定外の一般財源が必要になることも考えられます。通常の行政運営に必要な財源をしっかり確保することに加えて、特別交付税の措置が最重要となってまいります。私自身の経験や人脈を生かして要望活動を行うなど、果敢に取り組む覚悟であります。
 人員確保につきましては、引き続き全国の自治体から派遣職員をお願いするほか、任期付職員の採用や職員の前倒し採用を行ってまいります。また、復旧・復興を加速させるために組織改編や技術職員の効果的配置を行ってまいります。
 以上、令和2年度の施政方針について申し上げました。
 最後になりますが、中村哲医師について少しお話をさせていただきます。
 戦乱と干ばつに苦しむアフガニスタンで人道支援を続け、昨年12月に現地で凶弾に倒れられた中村哲医師に対し、本市で最初の市民栄誉賞を授与することといたしました。中村医師は、200年以上前に古賀百工によって作られ、今も現役で稼働する山田堰の技術を使ってアフガニスタンの地を緑に変えました。将来にわたり人々の暮らしを良くしたいという、先人の想いを現代に引き継いだことこそが最大の功績であると思います。中村医師の信念と行動は、私たちに夢と希望、活力を与えてくれました。
 復旧・復興なくして、朝倉市の将来は描けません。道のりは決して平坦ではありませんが、私たちもまた、中村医師の想いを引き継ぎ、本市がひとつとなって、「オールあさくら、ワンチーム」の精神で、1日も早く元の平穏な生活と自然豊かな美しい朝倉を取り戻し、将来世代にわたって安心して暮らせるまちづくりを進めていかなければならないと決意を新たにする次第です。
 
私は、誠心誠意、全力で山積する課題に挑戦し、市民の皆様、そしてその代表である市議会議員の皆様とともにふるさと朝倉市の未来を切り開いていく決意であります。議員各位には、重ねてご理解とご協力をお願い申し上げ、私の施政方針といたします。

 

 

 

 

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