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健腸長寿

登録日:2024年10月31日

 猛暑続きの夏も過ぎ、ようやく食欲の秋・味覚の秋です。旬の食べ物をよく噛んでゴックンすると、食道を通って胃に送られ、胃や十二指腸で消化・分解されて小腸で栄養素を吸収。吸収された栄養素は血管を通って全身に行き渡ります。消化物の残りカスは大腸で水分やミネラルが吸収されて便になり、肛門から排泄されますが、この時に活躍するのが腸内細菌です。また腸には全身の67割の免疫細胞が集中し、ウイルスや病原菌・アレルゲンなどの異物の侵入を防ぐ働きもあり、腸は人体最大の免疫器官といわれます。

 腸には約1000種類・約100兆個の細菌が棲んでおり(その9割は大腸)、食物繊維など人が分解できないものを分解・発酵して便を作ると同時に人が食べた物をエサに増殖してさまざまな物質を生み出し、人の健康状態に影響を与えています。

細菌は種類ごとに集団を形成して腸の粘膜を覆うようにへばりついており、あたかもいろいろな種類の植物が群生しているように見えることから「腸内フローラ(お花畑というような意味)」と呼ばれます。

 

腸内フローラ

 腸内細菌は大きく、体に有用な働きをする「善玉菌」、腸内で有害な物質を作る「悪玉菌」、善悪の優勢な方に味方する「日和見(ひよりみ)菌」の3種類に分けられ、生存競争を繰り広げながら一定のバランスを保っています。このバランスが崩れると下痢や便秘はもちろん、炎症性腸疾患・過敏性腸症候群・大腸癌などの腸の病気や、糖尿病・肥満・動脈硬化などの生活習慣病、花粉症やアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患、さらには自閉症・うつ・認知症など数多くの疾患の発症に影響し、大腸はあらゆる病気の発生源ともいわれます。

 腸内フローラは人によって異なり、「糞便微生物移植」という、健康な人から提供された糞便中の腸内細菌を患者さんの腸内に移植し、フローラを変化させることで病気を治すという治療法も試みられています。望ましい腸内フローラは、乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌が優位で一定のバランスがとれた状態です。年をとるにつれて急激に善玉菌が減って悪玉菌が増えますが、食事によっても変化します。

 善玉菌を増やすには、善玉菌を日々の食事でとり入れることと、今いる善玉菌にエサを与えて増やすことです。善玉菌を多く含むのは、ヨーグルトや納豆・チーズ・甘酒・味噌などの発酵食品ですが、食品やサプリメントに含まれる菌の多くは腸内に定着することはないので、習慣的にとり続けることがカギとなります。善玉菌のエサは、オートミール・納豆・海藻などに多い「水溶性食物繊維」、ごぼう・玉ねぎ・大豆や大豆製品などに多い「オリゴ糖」、豆類やイモ類に多く含まれる「難消化性でんぷん」などです。また、多くの野菜やキノコ類に含まれる「不溶性食物繊維」は、水分を含むと膨らんで便のカサを増し、腸を刺激して蠕動運動を促すので便秘対策に有効です。

 ただ健康にいいからといって「ばっかり食べ」はダメです。多品目の食品をとり多様性に富んだ善玉菌を育てましょう。また悪玉菌は高脂肪・高蛋白食を好みますので、食べ過ぎないようにしてください。なお、腸の健康状態は便でおおよそ予測できますので、日頃から便の色や形・硬さ・臭いに注意しておきましょう。赤い便(血便)は大腸からの出血、黒い便(タール便)は胃や十二指腸からの出血が疑われますので、急いで医療機関を受診してください。

三度の食事(朝食抜きや遅い夕食は✕)と適度な運動・質の良い睡眠で、お腹に綺麗なお花畑を育ててみませんか?

202410月 文責 大坪正明

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