市長施政方針(令和7年第2回朝倉市議会定例会)
本日ここに、令和7年第2回朝倉市議会定例会を招集いたしましたところ、皆様方にはご多忙な中にお繰り合わせご出席を賜り、厚くお礼申し上げます。本議会は、市政運営の基本となる令和7年度の当初予算をはじめ、多くの重要な案件につきまして、ご審議をお願いするものであります。したがいまして、その冒頭で私の令和7年度における市政運営に対する所信の一端を申し述べ、議員各位をはじめ市民の皆様のご理解とご協力をお願い申し上げる次第であります。
私は、これまで平成29年7月九州北部豪雨や令和5年7月豪雨などの度重なる災害から「ふるさと朝倉を取り戻す」ため、全力で復旧・復興に取り組んでまいりました。幸い、昨年は大きな災害もなく、災害復旧を大きく進展させることができました。朝倉市復興計画においても、令和7年度は「発展期」の2年目として位置付けており、被災地が新たな魅力と活力ある地域として生まれ変わり発展していくことを、実感していただきたいと考えております。
また、令和7年度は、私にとって市長就任8年目にあたり、2期目の総仕上げとなる重要な年度であります。市民の皆様に「市民と創る朝倉」の更なる深まりを感じていただけるよう、気を引き締め、市政運営に一層精進してまいる所存であります。
世界情勢を見ますと、ロシアによるウクライナ侵攻は今も続き、中東地域の報復の応酬も終わりが見えない状況にある中、経済面では、今後も持ち直しの継続が期待されているところですが、欧米における高い金利水準や中国における不動産市場の停滞の継続に伴う下振れリスク、そして、米国第一主義を掲げ、1月に再度トランプ大統領が就任したアメリカの今後の政策動向による影響に留意しなければなりません。国内におきましては、令和6年能登半島地震を始めとする災害に対する安全安心な社会づくりが望まれている中、経済面では、長きにわたったコストカット型経済から脱却し、デフレに後戻りせず、賃上げと投資が牽引する成長型経済に移行できるかどうかの分岐点にあります。政府は、令和7年度予算案として、過去最大の規模となる一般会計予算115兆5,415億円を計上し、働き方の改善や賃上げといった人への投資に力点を置くことと併せ、地方創生や防災を強化するものとなっております。首相施政方針におきましても、明治維新後の「強い日本」、戦後の「豊かな日本」に対し、今後は「楽しい日本」を目指し、その政策の核心に地方創生を位置づけ、「令和の日本列島改造」として推進する考えが示されたところであり、その施策に大きな期待を寄せるところであります。また、歳入の面においては、物価上昇を背景に税収も78兆4,400億円と過去最高となり、併せて国債の発行額が17年ぶりに30兆円を下回るなど、表面上は健全化が進んだものとなっております。
次に、朝倉市の令和7年度予算をはじめとする市政運営の基本的な考え方につきまして、第3次朝倉市総合計画に基づき、6つの基本目標ごとに申し上げます。
まず、一つ目の基本目標「災害に強く、快適に暮らせる安全・安心なまちづくり」についてです。平成29年7月九州北部豪雨や令和5年7月豪雨等による災害復旧は、市民はもとより関係機関、そして、市議会議員各位のご理解とご協力、併せて他自治体からの応援を含む全職員のたゆまぬ業務遂行により着実に進んでいるところであり、当初予算案においては、約70億円の災害関連経費を計上し、さらに、災害からの復旧・復興を進めてまいります。被災地の復興につきましては、朝倉市復興計画に基づく発展期2年目を迎え、旧松末小学校を活用したコミュニティセンターを稼働させるとともに、災害伝承広場の整備を行います。また、被災者生活再建支援システムを導入し、関係部署間の情報共有を図ることで、災害時における被災者支援を推進するとともに罹災証明の発行を迅速化します。近年の大雨・浸水軽減対策としまして、原鶴雨水調整池から分水路への排水ユニットの設置、新庁舎駐車場の調整池機能の整備など、災害に強い、安全・安心なまちづくりを進めてまいります。国土交通省が進める流域総合水管理を網羅した筑後川水系河川整備基本方針の見直し及び水資源機構が進める寺内ダム再生事業は、気候変動への対応と脱炭素施策を推進し、朝倉市における治水機能の向上に大きく寄与する取組であります。朝倉市は、今まで以上に関係機関と連携し、迅速かつ円滑に推進できるよう積極的に協力してまいります。交通環境につきましては、新庁舎開庁に伴い循環線の路線見直しを行い、地域住民の交通の確保及び充実を図ります。あわせて、令和7年度から令和14年度にかけ、甘木鉄道の車両更新を行い、利用者の利便性の向上を図ります。都市基盤の整備につきましては、市道甘木・堤線、通称けやき通りの東側への延伸のほか、国道322号道路事業に合わせ、甘木駅整備のための基本計画策定や駅周辺に賑わいを生み出すまちづくり事業を推進してまいります。新庁舎へのアクセス道路となる市道来春・一木線につきまして整備を進めるとともに、安全で安定した水道水の供給を図るため、福岡県南広域水道企業団からの送水施設の整備を本格的に実施してまいります。さらに、豊かな地域づくりに資する交流空間を提供するため、十文字公園の整備に着手します。
ここで、十文字公園に計画している総合的体育施設について触れさせていただきます。平成29年7月九州北部豪雨以前の平成29年3月市議会定例会の施政方針において、財政上の理由により凍結としておりました。その後、平成29年7月九州北部豪雨による災害復旧が進み、総合的体育施設の再開も可能ではないかと検討していた中、議員各位ご承知の通り、令和5年7月豪雨により甚大な被害を受けたところです。さらには、全国的な物価高騰と合わせ、今後に控えている甘木・朝倉・三井環境施設組合の施設の更新や甘木駅周辺整備などを見据えるとき、苦渋の選択ではありますが、議会はもとより市民の皆様からご賛同いただける結論として、総合的体育施設建設は、白紙とし、今後の体育施設は、現施設の長寿命化や維持補修などの対応を基本として図っていくべきと判断した次第であります。
次に、二つ目の基本目標「子どもから高齢者まで、健やかに笑顔があふれるまちづくり」についてです。結婚・出産・子育てにつきましては、あさくら”縁”結び会員制度やあさくら出会いサポートセンターJUNOALL(ジュノール)での縁結び事業を継続し、会員増や出会いの場を創出する取組を進めてまいります。また、全ての子ども、妊産婦、子育て世帯へ一体的に相談支援を行う「こども家庭センター」につきましては、新庁舎において、健康課と子ども未来課が一体となり、体制を充実してまいります。誕生祝い品として木のおもちゃを子どもたちに届け、育児環境に木を取り入れ、木に親しみ、木の温もりを感じることにより心を育むファースト・トイ事業に取り組んでまいります。民間団体等が実施するこども食堂への支援を継続するとともに、地域と一体となった支援の輪づくりを進めてまいります。健康づくりにつきましては、第3次朝倉市健康増進計画に基づき、定期的な健診、体力づくり支援、介護予防等に取り組んでまいります。また、協定を締結している久留米大学と連携し、アンチエイジングなどの健康教育を計画してまいります。帯状疱疹ワクチンにつきましては、本年4月から定期接種化されますが、市独自の取組として、定期接種の対象外となる50歳以上の方を対象に接種費用の助成を行ってまいります。朝倉診療所の移転につきましては、令和8年度の開所に向け、建設工事に着手してまいります。この他、地域で安心して介護、医療、保育が受けられるよう、介護職員、看護師、保育士の人材確保事業にも継続して取り組みます。
次に、三つ目の基本目標「次世代につなぐ環境にやさしいまちづくり」についてです。「朝倉市ゼロカーボンシティ宣言」や令和6年度に改訂した朝倉市環境基本計画を実現するため、政府方針と同様、2030年度までに二酸化炭素排出量50パーセント以上の削減を目指し、ゼロカーボン推進補助金を継続してまいります。また、し尿及び浄化槽汚泥の安定的な処理を継続するため、老朽化した汚泥再生処理施設の長寿命化に併せ、新技術の導入による性能の向上と規模の適正化を図る環境センターリニューアル工事を進めてまいります。森林の地球温暖化の緩和、水源の涵養機能、災害の防止など多面的機能を確保するため、森林環境譲与税などを活用し、森林の保全を図ってまいります。甘木・朝倉・三井環境施設組合につきましては、新施設稼働に向けて、新施設整備基本計画の策定及び新施設建設敷地造成工事等を進めてまいります。このほか、公共施設や学校施設等のLED設備の整備とともに、公用車の電気自動車購入を計画的に進めてまいります。
次に、四つ目の基本目標「活力ある産業と魅力的な観光資源があるまちづくり」についてです。老朽化した農業用施設の改修など農業基盤の整備を図るとともに、農業及び畜産の施設・機械整備に対する補助や、豪雨災害で被災した農家の営農再開に向けての支援事業を進めてまいります。輸入飼料価格の高騰による負担軽減を図るため、畜産農家に対して支援を行うとともに、共同乾燥調製施設、共同集出荷選果場及び堆肥センターの運営に係る電気料金の値上がり分に対して支援を行います。また、酪農家のヘルパー利用に対する支援を行い、経営負担の軽減を図ります。中小企業への支援につきましては、物価高騰等の影響により厳しい経営状況が続いていることから、エネルギー価格の値上がり分に対して支援を行うほか、消費を喚起し市内商工業者を支援するため、20パーセントのプレミアム付商品券を発行いたします。観光振興につきましては、原鶴温泉をはじめとする市内宿泊施設で利用できる30パーセントの割引クーポン券を発行し、宿泊客を呼び込むとともに、テレビや雑誌、SNS等を活用して観光客増加を図る観光プロモーション事業に継続して取り組むほか、3つのダムや温泉などの水に関する資源を活かした水の回廊構想を具体化する事業を展開してまいります。このほか、あまぎ水の文化村キャンプ場の利便性向上のため、シャワー棟を整備いたします。
次に、五つ目の基本目標「生きる力を育み、生涯成長できるまちづくり」についてです。児童・生徒が確かな学力、豊かな人間性及び健康・体力をバランスよく身につけながら、学校で楽しく充実して学べる環境づくりとして、タブレットを活用して自発的な学習意欲を喚起するため、算数と数学にAIドリルを導入してまいります。また、中学生の英語力向上を促進するため、希望する中学3年生に対して英語検定受検料の全額補助を行います。近年増加傾向が続く不登校対策として、従来の登校支援員やスクールソーシャルワーカーの配置に加えて、子ども達の居場所づくりとして、校内適応指導教室への支援にも取り組みます。加えて、児童・生徒数が少ない小規模校の適切な運営を図るため、大規模校からの通学を可能とする小規模校振興策を令和9年度まで試験的に導入します。学校施設のトイレの洋式化等を計画的に整備し、あわせて、更新時期となる学校系ネットワークの環境を整備してまいります。さらに、小中学校の給食費補助につきましても、物価高騰に伴う保護者の負担軽減のため拡充してまいります。文化・生涯学習につきましては、市民の学ぶ機会が十分にあり、歴史的・文化的な活動、生涯学習活動及びスポーツ活動に安心して参加できるよう、施設等を適正に維持管理いたします。本年11月に開催が決定しました全国藩校サミット朝倉大会を盛会とするため、実行委員会を組織し、あわせて、宮崎県高鍋町や山形県米沢市との連携を深めてまいります。このほか、生演奏による歌合戦やコミュニティ対抗eスポーツ交流大会の開催などにより、郷土愛の醸成と地域間交流を促進します。
次に、六つ目の基本目標「誰もが尊重され支えあい、市民とともに創る持続可能なまちづくり」についてです。コミュニティ活動の拠点施設の整備につきましては、安川コミュニティセンターが本年9月に完成する予定です。また、LINE(ライン)を活用したデジタル回覧板や防災行政無線のスマートフォンへの配信機能などを導入し、情報発信の多重化・多様化を進めるとともに、コミュニティ活動を安心して行っていただくため、区会長や農事実行組合長、避難支援者などに対する傷害保険の加入を進めてまいります。朝倉市のシティプロモーションにつきましては、本市の魅力を発信するため「朝倉市応援サポーター」に登録いただいている皆さんを対象に朝倉市をより知っていただき、更に愛着を持って活動していただけるよう体感ツアーを実施し、関係人口の創出・拡大に努めてまいります。朝倉市移住定住交流センター「コンネアサクラ」の活動を活発化するため、地域おこし協力隊等による人員強化を図り、更なる移住定住の推進を図ってまいります。自治体DXにつきましては、デジタルツール等を活用した業務改善を実施し、市民サービスの向上や事務の効率化を推進してまいります。戦後80年を迎える年でもあります。戦争という悲劇を繰り返さないよう、平和の尊さを伝承するため、平和事業を拡充してまいります。このほか、男女共同参画につきましては、女性の起業応援セミナーを継続し、女性の活躍推進を支援してまいります。
ここまで、基本目標毎に主な取組につきまして申し上げてまいりました。令和7年度は、新庁舎の開庁や第4次総合計画への着手、そして、朝倉市制施行20周年と、大きな節目を迎えることとなります。新庁舎への移転につきましては、支所以外の分散されていた組織を集中して配置する、いわゆる本庁方式・集中型として業務ができることとなり、職員間の連携が密になることはもとより、私からの指示・連絡も更に迅速かつ横断的に行うことが可能となり、業務の効率化と併せ、市民皆様の利便性の向上が期待されます。さらには、免震構造の庁舎という特性を活かした防災拠点としての重要な役割も担うこととなります。第4次朝倉市総合計画につきましては、市の人口は減少しているものの、社会増の状況となってきていることを踏まえ、更に交流人口なども増加できるような計画となるように着手してまいります。朝倉市制施行20周年記念事業につきましては、記念式典のみならず、先ほど説明いたしました基本目標ごとの事業と連携しながら、そのほかにも年間を通し、様々な記念事業を展開し、朝倉市に住んで良かった、合併して良かったと市民皆様に実感いただきたいと考えております。
以上、令和7年度の施政方針につきまして申し上げました。
全ての市民に夢と希望と笑顔があふれ、誰もが住みたい朝倉市を市民と創るため、市民の皆様、そして、その代表である市議会議員の皆様と意見を交わし、職員一人ひとりが改善意欲を持ち、積極果敢に行動し、成果を出すよう、私はもとより職員一同、精一杯、取り組んでまいります。
議員各位には、重ねてご理解とご協力をお願い申し上げ、私の施政方針といたします。