腎臓は腰より少し上の背中側に、左右1つずつある臓器です。大人の握り拳くらいの大きさで、血液をきれいにするという働きをして担っており、「肝腎要」と言われるくらい重要な臓器です。
血液は、全身を巡って老廃物をたくさん含んだあと、腎臓でろ過され、老廃物が取り除かれてから、再び全身に戻っていきます。
そのため、腎臓が障害されたり、腎機能が低下したりすると、全身のさまざまな部位に影響が現れてきます。
腎臓の障害や機能低下は、いろいろな病気が原因になって起こりますが、原因となる病気が何であれ、腎臓が障害されたり、機能低下が起きたりした状態を慢性腎臓病(CKD)と呼んでいます。 慢性腎臓病は適切な治療を受けないと、腎不全へと進行し、透析療法や腎移植が必要なる場合もあります。
現在、日本には、慢性腎臓病の患者さんが1330万人いるといわれています。これは、成人の8人に1人に相当する数です。
慢性腎臓病は、ほとんどの場合、全く症状がありません。そのため、病気に気付かないまま放置してしまい、進行してから気付くことが多いのです。早い段階で発見するためには、定期的に検査を受ける必要があります。慢性腎臓病の診断に必要なのは、次の2つの検査です。
1つめは、尿蛋白検査で、尿の中に蛋白が出ているかどうかを調べる検査です。
血液中には蛋白が含まれていますが、これは体にとって必要な物質です。
そのため、腎臓で血液沪過されても、腎臓が正常であれば、蛋白が尿中に出ていくことはありません。
ところが、腎糸球体にある沪過膜が障害されていると、そこから蛋白がもれ出てしまいます。このような尿を蛋白尿といいます。
尿蛋白検査の結果は、-、±、1+、2+、3+などで表されます。-、±が正常で、2+、3+となるほど、蛋白の濃度が高いことを示しています。
もう一つがで、血清クレアチニン検査という検査で、血液を調べる検査です。
クレアチニンは老廃物の一種なので、健康であれば血液に含まれるクレアチニンは腎臓で沪過され、尿中に排出されます。 ところが、腎機能が低下していると、クレアチニンを十分に取り除くことができなくなってしまうため、血液中に含まれるクレアチニンの量が増えることになります。
血清クレアチニン値から、腎機能がどの程度残っているかを推定することができます。それがeGFR (推算糸球体ろ過量)です。 具体的には、1分間にどれだけの血液をろ過して、尿を作れるかを示しています。
腎機能を示すeGFRは、60以上が正常で、30未満が腎不全となりますが、 健康な人でも、加齢とともに少しずつ低下していくのが一般的です。 例えば、40~50歳代でeGFRが60以上あり、高血圧、糖尿病などがなければ、 70~80歳代になって、eGFRが60を僅かに切ることがあっても、特に問題もなく過ごすことが可能です。
慢性腎臓病と診断されるのは、尿蛋白が1+以上、eGFRが60未満のいずれか、あるいは両方があり、 これが3か月以上続いている場合です。
市販のかぜ薬・抗菌薬・鎮痛解熱剤などの薬の中には腎臓で代謝され、排泄されるものがあります。特に高齢者や腎機能の低下が見られる人は、これらの薬には十分注意してください。
今日のまとめとして、腎臓は全身を巡る血液を沪過する働きを担っており、全身の健康維持のためには腎臓の健康維持が大切です。
参考文献 きょうの健康テキスト 2014年9月号