○朝倉市夢と緑を育む食料・農業・農村基本条例

平成22年12月21日

条例第29号

朝倉市の農業は、九州一の大河である筑後川やその水系に潤された肥沃な南西部の水田地帯と自然豊かな古処・馬見山系が広がる北東部山麓の下で、山田井堰や堀川用水と重連水車群をはじめとする先人たちの英知とたゆまない努力によって様々な困難を乗り越えながら、多彩な農産物を生産し、県内有数の産地を形成してきた。

農業及び農村は、私たちの生活に欠くことのできない食料を供給するだけでなく、美しい自然環境の形成や水源のかん養等の計り知れない恵みをもたらしてきた。また、農業は、農家の生活を支え農村を形成しながら伝統文化を継承するにとどまらず、集落機能を維持することにより地域社会の活動に大きな役割を果たしている。

私たち朝倉市民は、このような農業及び農村の役割が今後も変わることなく、健康で豊かな生活を支えていくために極めて重要な意義を持ち続けると確信する。

しかしながら、近年、農産物輸入の自由化や食生活の多様化等により、農産物の価格が低迷するなど農業は厳しい状況にあり、その結果が農業者の高齢化や担い手の減少、遊休農地の増加等となって現れており、とりわけ中山間地では過疎化により集落の維持さえ困難な地域が出現するなど、食料、農業及び農村をめぐる様々な問題が発生している。

このような中、本市の農業及び農村を振興するためには、競争力のある農業を確立させることはもとより、市民一人ひとりが食料、農業及び農村の市民生活に果たしている役割の重要性について理解を深めながら、地産地消の実践や食と農に関する知識を習得する取組等の継続的な活動を行うことが重要である。

私たちはここに、市民、農業者及び農業団体、食品産業の事業者並びに行政の協働により、食料に対する理解を深め、本市の農業及び農村を市民の貴重な財産として育み、次代に引き継ぐとともに、その進むべき道を明らかにするため、この条例を制定する。

(目的)

第1条 この条例は、本市の食料並びに農業及び農村の振興に関する施策について、基本理念、その実現に必要な基本的施策に関する事項を定めることにより、食料、農業及び農村に対する市民の理解を深め、持続的に発展する農業を確立させるとともに、健康で心豊かな住みよい地域社会の実現に寄与することを目的とする。

(基本理念)

第2条 食料は、人の営みを支える源であることから、安全で安心な農産物が安定的に生産及び供給されることにより、将来にわたって食料に対する信頼が確保されなければならない。また、地域で生産される農産物は、地域内での流通及び消費が促進されることにより、食育を含めた食の重要性に対する理解の促進と地域特有の食文化の継承が図られるとともに、地域外への供給が促進されることにより、本市の農業の活性化が図られなければならない。

2 農業においては、農地、農業用施設その他の農業資源及び多様な担い手を含む農業者が確保され、地域の特性に応じた収益性の高いゆとりある農業が営まれ、かつ、自然環境と調和した持続的な発展が図られなければならない。

3 農村においては、良好な自然景観の形成、水源のかん養、生物の多様性の保全等の多面的な機能(以下「多面的機能」という。)を有する、人と自然との共生ができる調和のとれた場として整備され、かつ、保全されなければならない。

(市の責務)

第3条 市は、前条に規定する基本理念にのっとり、食料並びに農業及び農村の振興に関する基本的かつ総合的な施策を推進するものとする。

(農業者及び農業団体の責務)

第4条 農業者及び農業団体は、農村における地域づくりの主体であることを認識するとともに、安全で安心な農産物を安定的に生産し、収益性の高いゆとりある農業経営の確立に向け、自らの創意工夫を活かした効率的な農業生産と魅力のある農村づくりに主体的に取り組むものとする。

(市民の役割)

第5条 市民は、食料、農業及び農村が市民生活に果たしている役割の重要性について理解と関心を深めるとともに、食育の重要性を認識し、地域で生産される農産物の消費を進めることなどにより、農業及び農村の振興に協力するよう努めるものとする。

(事業者の役割)

第6条 食品産業の事業者は、食料、農業及び農村が市民生活に果たしている役割の重要性について理解と関心を深め、地域で生産される農産物の積極的な利用と食品の安定的な供給に努めるものとする。

(基本的施策)

第7条 市は、第2条に規定する基本理念にのっとり、次に掲げる事項を基本的な施策として、各々の施策相互の有機的な連携を図りつつ、推進するものとする。

(1) 多様な担い手及び後継者の育成及び確保に必要な施策

(2) 競争力のある産地の育成及び収益性の高い農業経営の確立に必要な施策

(3) 農産物に対する消費者の信頼の向上並びに農産物の消費、利用、流通及び販売の促進に必要な施策

(4) 生産基盤の維持、優良農地の確保及び農村が有する多面的機能の発揮に必要な施策

(5) 農業の資源循環機能の維持及び環境保全に必要な施策

(6) 地産地消に必要な施策

(7) 食育の推進に必要な施策

(8) 農業及び農村に関する情報の提供、生産者と消費者との交流等による農業及び農村に対する市民の理解の促進に必要な施策

(基本計画の策定及び変更)

第8条 市長は、前条に規定する基本的な施策を総合的かつ計画的に推進するために、食料並びに農業及び農村の振興に関する基本的な計画(以下「基本計画」という。)を定めなければならない。

2 市長は、基本計画を定めようとするときは、朝倉市農林行政審議会条例(平成18年朝倉市条例第149号)に定める朝倉市農林行政審議会の意見を聴かなければならない。

3 市長は、基本計画を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。

4 市長は、食料、農業及び農村を取り巻く情勢の変化を勘案し、おおむね5年ごとに基本計画に検討を加え、必要に応じてこれを変更するものとする。

5 第2項及び第3項の規定は、基本計画の変更について準用する。

(実施状況等の公表)

第9条 市長は、基本計画に基づく施策の実施状況等をとりまとめ、公表するものとする。

(推進体制の整備)

第10条 市長は、食料並びに農業及び農村の振興に関する施策を総合的かつ計画的に推進するための体制の整備に関し、必要な措置を講ずるものとする。

この条例は、平成23年1月1日から施行する。

朝倉市夢と緑を育む食料・農業・農村基本条例

平成22年12月21日 条例第29号

(平成23年1月1日施行)